【初心者必見】AGAとは何か?発症の原因と進行の仕組みを専門家がわかりやすく解説します

最近、抜け毛が増えた気がする…そんなあなたへ。この記事ではAGAとは何か、原因と仕組みを初心者にもわかりやすく解説します。日本人男性の有病率や年齢別傾向、症状のサイン(生え際・つむじ・ボリューム低下)、進行パターン(M/O/U)とハミルトン・ノーウッド、ヘアサイクルとミニチュア化、原因(DHT・5αリダクターゼ・遺伝・生活習慣・頭皮環境)、セルフチェックと鑑別、受診の目安と診断(問診・視診・マイクロスコープ・ダーモスコピー・血液検査)までを一気に把握。『オンライン 英会話』のように専門用語もかみ砕きます。結論:AGAはDHTと5αリダクターゼ活性および遺伝でヘアサイクルが短縮し、放置で進行するため早期の見極めと受診が要です。

目次

AGAとは何か 原因と仕組みの基本をわかりやすく解説

AGA(エージーエー)は男性型脱毛症のことで、男性ホルモン(アンドロゲン)感受性の高い毛包が影響を受けることでヘアサイクルの成長期が短くなり、毛髪が細く短くなる「ミニチュア化」が進む、進行性の薄毛です。 生え際や頭頂部からゆっくり進むのが特徴で、かゆみや炎症を伴わないことが多く、放置すると少しずつボリュームが落ちます。基本的な原因は、テストステロンが5α-リダクターゼによりDHT(ジヒドロテストステロン)に変換され、そのDHTが毛包に作用してヘアサイクルを乱すことにあります。

AGAの正式名称と意味 男性型脱毛症

AGAはAndrogenetic Alopeciaの略で、日本語では男性型脱毛症と呼ばれます。アンドロゲン(男性ホルモン)と遺伝素因に関連する脱毛症で、瘢痕(はんこん)を残さない非瘢痕性脱毛症に分類されます。特徴は、前頭部(生え際)や頭頂部(つむじ)を中心に、毛が細く短くなっていく進行性の薄毛であることです。なお、女性にも同じ機序で起こる女性型脱毛症(FAGA/FPHL)があり、びまん性にボリュームが低下します。

AGAでは、成長期→退行期→休止期のヘアサイクルのうち成長期が短縮し、硬毛が産毛様の細い毛に置き換わるため、見た目のボリュームが持続的に減ります。 かゆみやフケなど炎症の症状が乏しい一方で、同じ部位の地肌が透けやすくなるのが目印です。

日本での有病率と年齢別の傾向

日本でもAGAは一般的で、思春期以降に発症し、加齢とともに自覚する人が増えます。発症年齢には幅があり、家族歴のある人では早めに気づくこともあります。以下は年齢ごとの傾向の概要です。

年齢層発症の傾向主な自覚サインの例
10代後半〜20代早期発症は少数だが、家族歴があると出現しうる生え際の後退への気づき、スタイリング時の立ち上がり低下
30代自覚例が増える時期で、進行パターンが表面化つむじの地肌が写真で目立つ、抜け毛の細毛化
40〜50代進行がわかりやすく、部位拡大やボリューム低下が顕著生え際と頭頂部の両方で密度が落ちる、分け目が広がる
60代以降個人差は大きいが、既存のパターンが緩徐に進む全体の毛径が細くなり、地肌の透け感が増す

民族差や生活習慣の影響はあるものの、根本にはアンドロゲン感受性と遺伝素因が関わります。数値は報告によって幅がありますが、世界的にも中高年男性で頻度が高いことが知られています。

AGAの主な症状のサイン 生え際 つむじ ボリューム低下

初期は「髪が細くコシがない」「立ち上がりが悪い」といった質感の変化から始まり、次第に密度が落ちます。典型的には生え際(前頭部)の後退や、つむじ(頭頂部)の薄毛が目立ち、進行に伴ってU字・M字・O字などのパターンが形成されます。

地肌が透けやすいのに、かゆみ・赤み・フケなどの炎症所見が乏しい場合はAGAを疑います。 同時に、抜け毛に太い毛と細い毛が混在し、全体の毛径がバラつくのもサインです。スタイリングで隠しにくくなってきた、ボリュームが一日もたない、写真でつむじが強く反射する、といった変化も手がかりになります。

AGAの進行の仕組み ヘアサイクルの乱れが起こる理由

AGA(男性型脱毛症)は、頭皮の特定部位(前頭部・頭頂部)の毛包が男性ホルモン感受性を持つことで、毛髪の生え変わり周期(ヘアサイクル)が乱れ、徐々に細く短い毛ばかりになる病態です。本質は「成長期の短縮」と「毛包のミニチュア化」による発毛力の低下で、抜け毛そのものよりも新しく太い毛が十分育たなくなることが進行の鍵」です。概念と典型パターンは公的な皮膚科系資料でも説明されています(MSDマニュアル 家庭版「男性型脱毛症」)。

ヘアサイクルの基礎 成長期 退行期 休止期

頭髪は、成長→移行(退行)→休止→再生を繰り返す生理的サイクルを持ち、健常では成長期の割合が圧倒的に多い状態が保たれます。

段階目安期間(頭髪)主な役割AGAでの変化
成長期約2〜6年毛母細胞が分裂し、毛幹が太く長く伸びる期間が短縮し、太く長い毛が育ち切らない
退行期約2〜3週間毛母細胞の増殖停止、毛包が縮小し始める相対的な比率が増え、成長期とのメリハリが崩れる
休止期約3〜4カ月毛包が休止し、脱毛後に新しい成長期へ移行休止期毛が増え、抜け毛の本数や細毛の割合が増える

健常では成長期毛が大半を占めるのに対し、AGAでは成長期が短くなるため、見た目のボリュームが急速に低下します(参考:MSDマニュアル 家庭版)。

成長期

毛乳頭からのシグナルで毛母細胞が活発に分裂し、太くコシのある毛が長く伸びます。AGAではこの期間が短く、十分に太らない毛が増えます。

退行期

毛包が縮小し毛母細胞の活動が止まる移行期間です。AGAでは退行期への移行が早まる傾向があります。

休止期

毛包が休む期間で、終わると新たな成長期が始まります。AGAでは休止期毛の比率が上昇し、全体のボリューム感を損ないます。

短縮する成長期と細くなる毛髪 ミニチュア化

AGAの進行では、感受性のある毛包で成長期が反復して短縮し、毛包自体が萎縮します(毛包ミニチュア化)。その結果、太く長い「終毛」が、産毛のような短く細い「軟毛」に置き換わるため、同じ本数でも見た目の密度が下がります。

成長期短縮がもたらす影響

1サイクルで毛が伸びられる長さが制限され、毛径も細くなります。これが繰り返されると、セットで隠せない地肌の透けが目立ちます。

毛包ミニチュア化の所見

同一部位で毛径が不均一(異径性)となり、細毛・短毛・色素の薄い毛が増加します。マイクロスコープでは太い毛と細い毛の混在が顕著です。

休止期毛の増加と抜け毛の見え方

休止期毛の割合が増えるため、シャンプー時やドライ時の抜け毛が増えたように感じますが、根本的には「太い新生毛が育たない」ことがボリューム低下の主因です。

M字 O字 U字の進行パターンと特徴

AGAは部位特異的に進行するため、前頭部(M字)、頭頂部(O字)、その混合(U字)などのパターンが見られます。

パターン初期サイン進行部位セルフチェックのポイント
M字(前頭部型)こめかみの生え際が左右対称に後退前頭部〜前頂部額の面積拡大、前髪のハリ低下、分け目が広がる
O字(頭頂部型)つむじ周囲の地肌の透け頭頂部中心に同心円状頂部のボリュームダウン、照明下での抜け感
U字(混合型)M字とO字が同時進行前頭部と頭頂部が連続して薄くなる頭頂部と前頭部の薄い範囲がつながるかを確認

前頭部型(M字)

ヘアラインの角が深く後退しやすく、顔の印象変化が早期から現れます。

頭頂部型(O字)

ボリュームの喪失が中心で、写真や俯瞰で気づかれることが多いタイプです。

混合型(U字)

進行が進むと前頭部と頭頂部の薄毛がつながり、頭頂から頭前部へ広範囲に及びます。

ハミルトン・ノーウッド分類で見る進行度

臨床ではハミルトン・ノーウッド分類が進行度評価に広く用いられ、治療効果判定や経過観察の共通言語になります(概要:MSDマニュアル 家庭版)。

ステージ特徴
I実質的な後退なし、成人型生え際
IIM字の軽度後退(テンポラルリセッション)
III明確なM字後退。頂部は保たれるか、III Vertexで頭頂部の薄毛が出現
IV前頭部の後退が進行、頭頂部の薄毛が拡大するが両者はまだ分離
V前頭部と頭頂部の薄毛域が拡大し、境界が細くなる
VI前頭部と頭頂部の薄毛が連続し、頭頂〜前頂部が広範囲に薄毛
VII側頭部・後頭部を除き、ほとんどの頭頂〜前頭部が薄毛

分類の使い方と注意点

同じステージでも部位や毛量の個人差が大きく、評価は「写真記録」「毛径分布」「地肌の見え方」を合わせて判断すると再現性が高くなります。進行は連続的で、早期ほど治療によるボリュームの回復が期待しやすいとされています。

AGAの原因 男性ホルモンと遺伝の関係

AGA(男性型脱毛症)は、男性ホルモン由来のジヒドロテストステロン(DHT)に対する毛包の感受性と、遺伝的素因が重なって生じる多因子疾患です。つまり、「ホルモン」「毛包の受け手側(感受性)」「遺伝」「環境因子」が組み合わさって進行します。MSDマニュアル家庭版

DHTと5αリダクターゼの役割

テストステロンは頭皮などで5αリダクターゼによりDHTへ変換されます。DHTは毛包のアンドロゲン受容体に結合し、成長期を短縮させて毛包を小型化(ミニチュア化)させ、前頭部・頭頂部を中心に薄毛を進行させます。血中テストステロン値が正常でも、局所でのDHT産生や受容体感受性が高いとAGAが進みやすくなります。MSDマニュアル家庭版

5αリダクターゼのアイソザイムと分布

アイソザイム主な分布AGAとの関連治療標的
5αリダクターゼI型皮脂腺、頭皮、肝臓 など頭皮皮脂腺・毛包でDHT産生に関与デュタステリドが強力に阻害
5αリダクターゼII型毛包(特に前頭・頭頂部)、前立腺 など毛包ミニチュア化の中心的酵素フィナステリドおよびデュタステリドが阻害

AGAは「DHTが毛包に作用しやすい部位」に局在して進行します。部位差(前頭部・頭頂部>後頭部)は、局所の5αリダクターゼ活性や受容体感受性の違いで説明されます。 MSDマニュアル家庭版

DHTが毛包に与える影響のメカニズム

DHTは毛乳頭細胞のシグナル伝達を変化させ、成長期の短縮、休止期への早期移行、毛包サイズの縮小を引き起こします。その結果、毛は細く短くなり、地肌の透けが目立つようになります。MSDマニュアル家庭版

遺伝の関与 家族歴と多因子の影響

AGAは多因子遺伝で、父方・母方の家族歴がいずれも関係します。特定の一遺伝子で決まるのではなく、複数の遺伝的バリアントが感受性を左右し、生活環境と相互作用して発症年齢や進行速度に差が生じます。家族に若年からの薄毛が多い場合は、より早期に症状が出ることがあります。MSDマニュアル家庭版

アンドロゲン受容体遺伝子と関連領域

X染色体上のアンドロゲン受容体(AR)遺伝子の多型や、頭頂部近傍の染色体20p11領域などが関連すると報告されています。これらはDHTシグナルへの毛包の反応性(感受性)に影響し、同じホルモン環境でも個人差が生まれます。MSDマニュアル家庭版

家族歴の活用と限界

家族歴は発症リスクの推定に有用ですが、家族歴が乏しくてもAGAは起こり得ます。発症には遺伝に加え、年齢やホルモン環境、生活習慣などの非遺伝要因が関与するためです。「遺伝だから止められない」わけではなく、医学的介入と生活管理で進行抑制は期待できます。

生活習慣 ストレス 睡眠 栄養 喫煙との関係

生活習慣は「発症の引き金」というより「進行の助長要因」として働きます。喫煙は酸化ストレスや末梢循環の低下を通じて毛包環境を悪化させ、睡眠不足・慢性ストレスはホルモン・自律神経の乱れを介してヘアサイクルに負荷をかけます。偏った食事や急激な減量はタンパク質・鉄・亜鉛などの不足を招き、毛の成長材料を損ないます。飲酒過多や運動不足による代謝異常も炎症性環境を高め、進行に不利です。

因子示唆される機序実務上のポイント
喫煙酸化ストレス増大、微小循環低下禁煙で頭皮環境の改善が期待できる
睡眠不足・ストレスホルモン・自律神経の乱れ、炎症惹起規則的な睡眠・ストレス対策を継続
栄養の偏り・急激な減量タンパク質・微量栄養素不足バランスの良い食事、無理な減量を避ける
運動不足・過度の飲酒代謝異常・慢性炎症の助長適度な運動と節酒で全身状態を整える

生活習慣の改善だけでAGAが治癒するわけではありませんが、治療効果の最大化と進行抑制には有益です。 日本皮膚科学会 診療ガイドライン一覧

皮脂 フケ 紫外線 頭皮環境の影響

皮脂の過剰やフケ(脂漏性皮膚炎など)そのものはAGAの直接原因ではありませんが、炎症やかゆみで毛包環境が悪化すると抜け毛が目立つことがあります。紫外線は酸化ストレスを増やし、毛幹・頭皮のダメージを助長します。適切な洗髪や紫外線対策、脂漏性皮膚炎が疑われる場合の皮膚科受診は、治療と並行して頭皮環境を整えるうえで役立ちます。MSDマニュアル家庭版

頭皮トラブルへの対処

かゆみ・赤み・フケが強い場合は、医師の評価のもとで適切な外用治療(例:抗真菌薬や抗炎症薬)を行い、物理的刺激(強いブラッシング・過度のマッサージ)や高温のドライヤーを避けましょう。AGAの主因はDHTと遺伝ですが、頭皮炎症を抑えることが進行抑制の土台になります。

AGAかどうかの見分け方とセルフチェック

AGA(男性型脱毛症)は、前頭部から生え際、頭頂部にかけて徐々に毛が細く短くなる「ミニチュア化」が進み、密度が落ちていくのが特徴です。進行はゆっくりで、かゆみや痛みは少ない一方、放置するとヘアサイクルの成長期が短くなり、ボリューム低下が目立ちやすくなります。この章では、ご自宅でできるチェックの方法と、他の脱毛症との違いをわかりやすく整理します。

AGAに多い症状のチェックリスト

次の項目に複数当てはまる場合、AGAの可能性があります。自己判断に偏らず、記録とともに皮膚科の受診を検討しましょう。

  • 同世代と比べて、前頭部の生え際(特にこめかみ付近)や頭頂部の地肌が透けて見えやすくなった
  • 以前よりも、抜け毛が細く短い(産毛のよう)ものが増えた
  • スタイリング時に、トップのボリュームが出にくく、分け目が太くなった
  • 額が広くなった印象や、M字・O字・U字のいずれかのパターンで後退・薄毛が進む
  • 家族にAGAの既往(父母の血縁に生え際後退や頭頂部の薄毛)がある
  • 頭皮トラブル(強いかゆみやジュクつき)が乏しいのに、月単位で徐々に薄毛が進行している

セルフチェックの方法

再現性のある条件で、変化を定点観察します。

  • 撮影チェック:洗髪後に乾かしてから、同じ照明・距離・角度で「正面・頭頂部・側頭部」を毎月1回撮影し比較する
  • 毛の太さ:洗髪時や枕元の抜け毛を眺め、太い毛に混じって細い短毛が増えていないか観察する
  • 触感の変化:トップの立ち上がりが弱くなり、ボリュームが出にくい日が続くかをメモする
  • 家族歴:父方・母方の血縁で生え際後退や頭頂部の薄毛があった年齢と程度を聞き取り記録する

チェック時の注意点

季節や体調で一時的に抜け毛が増えることがあり、数日の変化で判断しないことが重要です。1〜3か月のスパンで写真とメモを蓄積し、連続的な「細毛化」と「密度低下」を確認するようにしましょう。強いかゆみ・赤み・フケの増加を伴う場合は、炎症性疾患の可能性を考えて早めに皮膚科を受診します。

AGAと円形脱毛症 脂漏性皮膚炎 甲状腺異常の違い

よくある脱毛の原因と、分布や皮膚の所見の違いを整理します。境界のはっきりした脱毛斑や強い炎症、全身症状がある場合はAGA以外の可能性が高いため、自己判断せず医療機関へ。

疾患脱毛の分布・進行頭皮所見随伴症状受診の目安
AGA(男性型脱毛症)生え際と頭頂部中心にびまん性に進行。ミニチュア化で細毛・短毛が増える炎症は乏しい。毛径の不均一が目立つ自覚症状は少ない。心理的ストレスが強まることあり数か月で写真上の進行が確認できたら皮膚科へ
円形脱毛症境界明瞭な円形〜多発の脱毛斑。急速に出現し眉毛・体毛に及ぶことも感嘆符毛(根元が細い折れ毛)を認めることがある爪の点状陥凹などを伴うことあり急に円形の脱毛斑が出たら早期に皮膚科へ
脂漏性皮膚炎による脱毛頭部全体で散在的に薄く見えることがある赤み・油っぽいフケ・かゆみが強い掻破で抜け毛が増える炎症所見(赤み・フケ・かゆみ)が目立つ場合は皮膚科へ
甲状腺機能異常に伴う脱毛頭部全体のびまん性脱毛。眉毛の外側が薄くなることも頭皮所見は軽微なことが多い低下症:寒がり・むくみ・便秘・倦怠感/亢進症:動悸・手の震え・体重減少脱毛に全身症状が伴う場合は内科(甲状腺)と皮膚科を受診

受診の目安と放置リスク

次のいずれかに当てはまる場合は、早めの受診をおすすめします。

  • 3〜6か月の定点写真で、生え際の後退や頭頂部の地肌の透けが明らかに進んだ
  • 20〜40代で家族歴があり、細い抜け毛が増えた
  • 赤み・強いかゆみ・フケ・膿疱などの炎症所見がある
  • 円形の脱毛斑や全身症状(動悸・だるさ・体重変化など)を伴う

AGAは進行性で、ミニチュア化が進むほど太い毛への戻りに時間がかかると考えられています。自己流のマッサージや民間療法で受診が遅れると、治療開始のタイミングを逃すことがあります。まずは一般皮膚科で鑑別と頭皮の評価を受け、必要に応じて専門外来や内科での検査(甲状腺など)につなぎましょう。

医療機関で行う検査と診断の流れ

皮膚科やAGA専門外来では、問診・視診・機器を用いた観察を段階的に行い、円形脱毛症や脂漏性皮膚炎、びまん性脱毛(休止期脱毛)などを鑑別したうえで、AGAの確度を評価します。自己判断で治療を始める前に、医学的根拠に基づく診断プロセスを踏むことが安全で近道です。

ステップ目的主な観察・検査補足
問診症状の経過とリスク因子の把握家族歴・生活習慣・既往歴・薬剤歴・抜け毛の量や部位鑑別診断の起点。治療可否や方針にも直結
視診・触診典型的部位の進行評価と頭皮環境の確認生え際(M字)、頭頂部(O字)、全体ボリューム、紅斑・鱗屑標準化した写真記録で経時的比較を行うことが多い
マイクロスコープ/ダーモスコピー毛幹・毛包開口部の詳細観察毛径の多様性、ミニチュア化、1毛包内の毛本数低下、周毛輪(peripilar sign)円形脱毛症・脂漏性皮膚炎などの所見も同時に確認
必要に応じた血液検査内科的要因の除外と治療前評価甲状腺機能、血算・フェリチン、栄養指標 など臨床像が非典型/急速進行/全頭性などで検討
結果説明・治療提案診断の共有と治療の選択内服(5α還元酵素阻害薬)・外用(ミノキシジル)・生活指導効果判定の時期や副作用対策、フォロー間隔を合意

問診と視診のポイント

問診:押さえる項目

問診では、発症時期、進行速度、抜け毛の増加の自覚、部位(生え際・つむじ・側頭・後頭)、家族歴(父母・祖父母・兄弟の男性型脱毛)、生活習慣(睡眠・ストレス・喫煙・栄養)、既往歴(甲状腺疾患・自己免疫疾患・皮膚疾患)、内服・外用薬(プロペシア、ザガーロ、抗うつ薬、抗凝固薬、レチノイド、ビタミンA過量など)を系統的に確認します。抜け毛の季節性や急な環境変化の有無も参考になります。

項目確認する内容AGAで重要な理由
家族歴直系・傍系の薄毛の有無・発症年齢遺伝素因の示唆(多因子遺伝)
症状の経過ゆっくり進行か、急速か、寛解・再燃AGAは緩徐進行が多い。急速なら他疾患を鑑別
服薬・サプリ開始時期・用量・目的(筋肥大サプリ等含む)薬剤性脱毛や相互作用を除外
生活習慣睡眠不足、強いストレス、偏食・減量休止期脱毛の誘因評価に有用

視診・触診:確認ポイント

視診では、前頭部のM字後退、頭頂部のO字の拡大、U字型の広がり、分け目の透見性、全体のボリューム低下を確認します。頭皮の紅斑や脂性の鱗屑が強い場合は脂漏性皮膚炎の合併を考慮します。触診では毛の太さのばらつきやコシの低下、牽引テスト(軽く引いたときの抜毛数)を参考所見として用います。再現性のある評価のため、同一条件(角度・距離・照明)での写真記録を初診時から行うことが望まれます。

マイクロスコープ ダーモスコピーでの評価

評価の目的

拡大観察(マイクロスコープ、毛髪用ダーモスコピー=トリコスコピー)により、肉眼では見えにくい毛幹・毛包開口部の変化を捉え、AGAの特徴的所見や他疾患の所見を確認します。

AGAでよくみられる所見

毛径の多様性(太い毛と細い毛が混在)、ミニチュア化毛(細く短い毛の増加)、1毛包内の毛本数の減少、前頭・頭頂の周毛輪(peripilar sign)などが代表的です。これらはヘアサイクルの成長期短縮と毛包の縮小を反映します。

鑑別に役立つ所見

所見AGA円形脱毛症脂漏性皮膚炎
毛径のばらつき明瞭に増加局所で不均一だがパターン性は乏しい基本は保たれる
毛幹の形態ミニチュア化毛が増える感嘆符毛・黒点・黄白色点が出現毛幹は比較的保たれる
頭皮所見周毛輪(褐色環)を認めることがある炎症所見は軽微〜中等度紅斑と脂性鱗屑が主体

観察時は整髪料を洗い流し、頭皮が乾いた状態で均一な光源を用いると判定が安定します。必要に応じて同部位を定点観察し、治療前後で比較します。

血液検査が必要なケース

実施を検討する目安

典型的な男性型の進行パターンで他の症状が乏しい場合、血液検査を必須としないこともあります。一方、急速な全頭性の抜け毛、全身倦怠感・体重変動などの全身症状を伴う場合、若年発症で非典型パターンの場合、皮疹や瘙痒が強い場合、既往歴・服薬歴から二次性脱毛が疑われる場合には、内科的要因の除外や治療前評価として検査を行います。

主な検査と目的

検査目的・鑑別実施のきっかけ
甲状腺機能(TSH、FT4)甲状腺機能異常に伴うびまん性脱毛の除外急な脱毛、寒がり・動悸など全身症状
血算・フェリチン貧血や鉄欠乏の評価易疲労感、食生活の偏り、疾患既往
亜鉛など栄養関連栄養障害・吸収不良の示唆極端な食事制限、消化器症状の併存
肝腎機能・脂質・血糖治療前の全身状態把握基礎疾患・服薬状況により医師が判断
PSAなど(対象者限定)5α還元酵素阻害薬使用時の基準値把握年齢や既往に応じて実施を検討

検査の要否は臨床像とリスク評価に基づき個別に決まります。診断と検査の位置づけについては、医療専門家向けのガイドや教科書も参考になります。詳細は、日本皮膚科学会 ガイドライン一覧や、一般向けの解説であるMSDマニュアル家庭版「男性型脱毛症」をご参照ください。

まとめ

AGA(男性型脱毛症)は、DHTが毛包に作用し成長期が短くなることで髪が細く短くなる「ミニチュア化」が進み、M字・O字・U字に代表されるパターンで進行します。背景には5αリダクターゼと遺伝が大きく関わり、生活習慣や頭皮環境は進行に影響します。進行度はハミルトン・ノーウッド分類で把握でき、放置すると広がる傾向があります。気になるサインが続くなら、皮膚科やAGA専門の医療機関で、問診・視診やマイクロスコープ等による評価を早めに受けることが近道です。

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